研究内容

主題1)膵臓腺房細胞におけるオートファジーの制御機構

 細胞内のバルク分解は、リソソームによって行われ、その主要な経路であるオートファジー(autophagy)は全ての真核細胞に普遍的な機構である。細胞がある種のストレス(アミノ酸飢餓の状態や、異常タンパク質の蓄積)に晒されると、脂質二重膜が形成され、さらにそれが成長していくことで(隔離膜)、細胞質成分やオルガネラなどを二重のリン脂質の膜で取り囲んだオートファゴソームが形成される。オートファゴソームが形成されると、リソソームと膜融合を起こし、オートファゴソーム内の分解すべきタンパク質と、リソソーム酵素が反応し、タンパク質はアミノ酸やペプチドに分解される。オートファジーは細胞機能の恒常性維持に不可欠な機構であるが、その制御機構はいまだ不明な点が多い。
 我々が樹立したserine protease inhibitor, Kazal type 3 (Spink3、ヒトではSPINK1:トリプシンに特異的な膵臓内インヒビター)欠損マウスの膵腺房細胞では、急性膵炎モデルマウスよりも明らかに過剰なオートファジーが誘導されることから、Spink3は単なるトリプシン特異的インヒビターではなく、オートファジーを制御している可能性が強く示唆される。
 そこで、Spink3によるオートファジーの制御機構を、遺伝子改変マウスを駆使して解明する。

主題2)遺伝性膵炎モデルマウスの樹立、および慢性膵炎からの膵発癌機構の解明構

 近年の疫学調査から、カチオニックトリプシノーゲンに変異をもつ遺伝性膵炎患者が健常人と比較して約50-70倍の頻度で膵癌を発症することが明らかとなった。またSPINK1に変異を持つ患者においても膵癌発症のリスク上昇が指摘されている。つまり慢性の炎症(慢性膵炎)が増殖因子、サイトカイン、活性酸素などの産生を誘発し、結果的に発癌につながる変異を誘発していることが推測される。これまでに数多くの研究室で慢性膵炎モデルマウスの樹立を試みたにも関わらず、現在においてもなお樹立されていない。
 そこで主題2)ではこれまでに樹立されなかった遺伝性膵炎モデルマウスの作製を行い、慢性炎症状態から膵臓癌に至る経路をマウスで再現することで、ヒト膵癌発症のメカニズムを研究している。

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